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さつじんめいろ
殺人迷路
夢野 久作
07 (連作探偵小説第七回)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,931 字 · 12 页
だから彼はそれと一緒に、ツイ四日前あの珈琲店で、彼自身と星田と村井の三人が、女給の綾子を取巻いて交換した、印象の深い会話の数々までもアリアリと思い出したのであった。極めて自然ではあったが、三人の話題を恐ろしい犯罪の方向に引っぱり込んで「完全な犯罪は在り得ない」と主張する星田を、冷笑的な態度で反駁していた村井の言葉を……そうして最後に何の苦もなく哄笑しいしいサッサと別れて行った村井の態度を……
ところが、そんな潜在的な記憶に心を惹かれていたせいでもあったろうか。何の気もなく「村井君のイタズラかも知れない」と云った彼の言葉は果然、重大極まる事実となって彼の眼の前に立ち塞がってしまったではないか。そうして何でも彼でも此の疑いを晴らさなければトテモたまらない……と云った気持にフラフラと此処まで追い遣られて来た彼自身ではなかったか……。
そう思い思い彼は依然として、躊躇するでもなく、しないでもないフラフラとした恰好で店の中へ這入ったのであった。
「いらっしゃいまし」
と云うイガ栗頭の中小僧の愛嬌顔と、縞の筒ッポーが彼の眼に映った。しかし空ッポになった彼の頭は、それ以外の事を何一つ印象し得なかった。