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さつじんめいろ

殺人迷路

夢野 久作

07 (連作探偵小説第七回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,931 字 · 12 页

青空文庫

眼の前の半空に大きく「あづま日報社」と輝き現わした三色のネオンサインの交錯を仰いだ。そのうちに、

「ハハア。これは村井が出て居る新聞社だな。そんなら、俺は此処へ村井を探しに来たんだな……」

という事実をやっと意識した彼は、いつも村井に会いに行く時の習慣を無意識の中に繰返しながら、トラックの出口から中庭へ這入って、編輯局の裏梯子を登った。何処をどう歩いて、ドンナ事を考えて来たかわからないまま、熱病患者のようにヘトヘトになっている彼自身の身体と頭を、無理矢理に上へ上へと押し上げながら……

鉄梯子の上の写真製版室から真白い光明が、眼も眩むばかり射出されていた。その蔭になって彼が登って行くのが見えなかったのであろう。彼の頭がモウ二三歩で階段の上に出ようとした処へ、ちょうど編輯局の裏廊下に当る窓の処から、慌しい会話が聞えて来た。

「オイ。何処へ行くんだ!」

「アッ。君だったのか……君……村井は何処へ行ったか知らないかい」

「知らないよ。今日は来ない様だがね……何か事件かい」

「ウン。チットばかり凄いんだ。星田が引っぱられたんだ」

「星田……星田って何だい。議員かい」

「馬鹿。