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さつじんめいろ

殺人迷路

江戸川 乱歩

05 (連作探偵小説第五回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页

青空文庫

実に何から何まで、申分なくお膳立てが揃っているんだよ。流石の僕もゾッとしないではいられなかった」

星田が深夜の浅草公園をさまよい歩く習慣は、仲間のうちでは誰知らぬものもなかったけれど、と云って、それがアリバイになる訳はなかった。

「なる程、こいつは君が変な顔をしていた筈だね。何だか、僕まで怖くなって来たぜ。しっかり考えなくっちゃいけない。並々の敵ではなさそうだ」と云いかけて、津村はふとそれを思い出した。「待てよ、いいものがあるぜ。星田君。あれさホラ、例の指紋さ。まさかいくらなんでも、君の指紋まで盗み出すことは出来ないじゃないか。あの指紋一つで、君の寃罪ははれる訳だ」

併し、それを聞かされても、星田は一向喜ぶ様子はなかった。彼は一層困惑した、恐怖に耐えぬ表情になって、静かに右手を、津村の目の前に差出した。

「これを見給え。僕の拇指をよく見てくれ給え」

津村はギョッとして、思わず相手の指先を握り、その拇指の腹を電燈にかざして見た。

彼は長い間、黙ってそれを見つめたまま、云う所を知らなかった。そして津村の顔までが、星田以上に蒼ざめて行くのであった。

そこには、星田の拇指には、つい先き鎌倉警察署で見せられた、犯人の指紋写真と同じ螺旋紋が、そして、その中心から右の外端にかけて、三日月型の傷痕が、寸分違わず、ハッキリと