轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ははのじょうきょう
母の上京
「人間 第二巻第一号」1947(昭和22)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,655 字 · 33 页
春を売るわが身のあさましさを知る故に、その母のみだらな情慾を憎むのであらうか。それとも、聖なる母を祈ることは娘の本能なのであらうか。
かほど切なる娘の祈りにもかゝはらず、夏川はたうとうその母と情交を結ぶやうになつてしまつた。
封鎖直前、あぶく銭の余りがあつたので、蒲鉾小屋のオデン屋をもたせてやつた男があつた。この男は戦争前から屋台のオデンが商売なのだが、田舎に疎開してゐたために立ちおくれて、闇市で魚屋の手伝ひなどをやつてゐたのを、夏川が知り合つて助けてやつたのだ。夏川よりも三ツ四ツ年上の年恰好だが、これが今では夏川の親友で、この男が常々夏川にかう言つてゐたものである。
「ナアさん。いくら酔つ払つても、あの婆アさんにだけは手をだしちやアいけないよ。あの年頃の女は先に男のできる当もないから気違ひのやうに絡みついて離れられなくなるものだ。私がそれで苦い経験があるのだよ。たつた一夜の出来心で取返しのつかないことになるからね」
夏川はその言葉も忘れてはゐなかつた。だが、堕ちかけた魂は所詮堕ちきるところまで行きつかざるを得なかつたであらう。彼の魂はとつくの昔にそこまで堕ちてゐたのであるが、外形だけが宙ぶらりんにとまつてゐたといふだけで、さうなることが自然であつた。