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ははのじょうきょう
母の上京
「人間 第二巻第一号」1947(昭和22)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,655 字 · 33 页
られるのであつた。夏川はそれが怖しかつた。
夏川は変態的な情慾にはてんから興味をもち得ないたちであつたが、それとは別に、ひとつの純情に対するいたはりは心に打ち消すわけに行かない。すりよるヒロシの体臭が不快であつたが、それを邪慳にするだけの潔癖もなかつた。まア、ともかく、すこしぶら/\して、考へをまとめようと思つた。
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夏川が戦争中つとめてゐた会社は終戦と同時に解散した。そのどさくさに、会社の残品を持ちだしてなかば公然と売りとばした一味の中に彼もまじつてゐたわけだが、別段計画的な仕事ではなく、誰しもその場に居合はせればさうせざるを得ぬ拾ひ物のやうなもので、その利得なども今から見れば問題にならぬ小額だつた。けれども、これが病みつきであつた。
その会社では彼は高い地位ではなかつた。元々徴用逃れに入社した特殊会社であつたが、年齢が年齢だから、入社の浅い割には然るべき地位であつたと云へる。空襲の始まる直前妻子を故郷へ帰したが、空襲で焼け、会社の世話で小さな借家へ同居するやうになつて、同居してゐる会社の女事務員と交渉ができた。彼の細君は父の主筋に当る家柄の娘で、元々父母が押しつけられ、その又父母が大いに有難がつて無理に押しつけた女で、別段家柄を鼻にかけるわけでもないが、陰気で、何かと云へば実家へ