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ははのてがみ
母の手紙
中野 鈴子
「ナップ 第一巻第四号」戦旗社、1930(昭和5)年12月13日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 985 字 · 2 页
幸助
けさ 手紙をうけとった
やっぱり達者でいてくれたか
わたしは思わず手紙をおしいただいただ
もしやこの暑さでやられてでもいるのではないかと心配していたに
牢やの中はどんなに暑いじゃろうねい
そここそ地獄じゃもの
夏は出来るだけ暑いように冬はなるべく
寒いように仕掛けてあるんじゃろうさかいね
コンクリで囲うた窓一つない箱みたいな建て物じゃと言うでないか
ようく 障りなくいてくれた
苦労ばかりかけてきたお母さんに
またこのような心配させて申し訳もない
不孝者ととがめないでおくれ
今日の手紙にもこんなことを書いてあるが
幸助
それは初めのうちはそうと思っただ
五年前に年寄りの母親をひとりのこして
ポーイと江戸さ行ったきり
金を送るでなし一本のたよりも呉れず
そのあげくに牢やへたたき込まれたことがわかった時にゃ
不孝も不孝
牢やへたたきこまれると言うは
何ということだと思い
うらんだり 泣いたりしただ
在所の者も白い眼で見るし
村さ はなれて他国へ夜逃げでもしようかと考えただ
本当にそう思っただ
お前はズッと東京でその
労働組合というところに
いたんだか
お前はその労働組合で
何千人何万人の働いても働いても貧乏している