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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
かの女と逸作の友人の実業家が招いて呉れたK・S氏夫妻の招待は、茶寮の農家の間が場席だった。煤けた梁や柱に黒光りがするくらい年代のある田舎家の座敷を、そっくりそのまま持ち込まれた茶座敷には、囲炉裏もあり、行灯もあった。西洋人に日本の郷土色を知せるには便利だろうという実業家の心尽しだった。稚子髷に振り袖の少女の給仕が配膳を運んで来た。
K・S氏はそこで出た料理の中で、焼蛤の皿に紅梅の蕾が添えてあったことや、青竹の串に差した田楽の豆腐に塗ってある味噌に木の芽が匂ったことを想い出して話した。
「日本人は実に季節の自然を何ものにも取り入れることがうまい」
逸作はまた彼の友が、K・S氏はさすがに芸術家だけあって、西洋人にしては味覚や嗅覚がデリケートなことに感心していたと告げた。
かの女はまた夫人に、稚子髷をはじめ日本の伝統の髪の型を説明していた。
一行四人の足は日比谷公園に踏み込んだ。K・S氏は沁々とした調子でかの女に云った。
「いろいろ見せて頂いたり、味わわせて頂いたりしましたが、こちらへ来てはじめてイチロのことが判ったような気がします。彼はやっぱりこの国柄を背景に持った芸術家です。