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ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

おまえの腕白はちっとも変らなかった。娘たちはつまらない顔をして帰って行った」

かの女は娘たちの案に相違した顔を思い出すように、またくっくと笑った。

「何だ。そんな話ですか。親というものは、子供のちょっとしたことでも、いつまでも覚えていて興味を持つものですね」

むす子は自分の幼時の話を聞くことは、嫌いではないらしいが、母がそれをあまり熱して興味がることは、母を平凡にし、母を年寄り臭くするので、その点を嫌がった。

「おかあさんもなるべく昔のことを忘れて、新しく出発するんですね」

「出発するってどんな風によ」

「おとうさんをご覧なさい。根が悧巧だから、おかあさんのいのちを食って、今までの仕事をしました。今度はおかあさんの番ですよ。おとうさんのいい所を摂って成長しなきゃ」

「たとえばどんなところよ」

「あのぬけぬけとしたところなど。おかあさんやこれからの僕には是非必要ですね」

「あたしはおとうさんにどんなところを与えたろうか」

「あれっ! 知らないんですか。おとうさんのあの気位だとか、純情だとかいうものは、みなおかあさんのいのちから汲み出したものじゃありませんか。うまく摂ってるからちょっと判らないが」