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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

ある新聞記者の見た敗戦

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,333 字 · 134 页

青空文庫

毎朝甲板で Ten-in-one の食事が終ると、道具を持ち出し、どこで何々をしろと命令する。はじめの間は一々通訳していたが、仕事が仕事で至極簡単だから、二日目の午后あたりから、もう僕の用事はなくなってしまった。さりとて皆が日のあたる甲板で働いているのに、僕一人日かげで本を読んでいる訳にも行かないから、時々はスクレーパーを持って鉄板をガシャガシャやったり、箒を持って錆を掃いたりすると、B中尉かARかのどちらかが発見し、「イシ、君はそんなことをしなくてもいいのだ」と制止するのであった。

ARは三十分おき位に銀盆にシガレットを入れて持ち出し、皆に休むようにいってくれといった。シガレットは Ten-in-one から沢山出て来るので、それだけでも充分だったが、十一月とはいえマニラは暑く、おまけに海水の照り返しがきびしかったので、使役の兵隊はよろこんで一服した。まったくARは無愛想で、しかもよく気がついた。

ある日B中尉が僕に「本艦は米をウンと持っているのだが誰も食わない。日本人は米を食うそうだが皆にやったらよろこぶだろうか」と聞いた。兵隊達は三度三度、Ten-in-one の御馳走を食いながらも、彼等のいわゆる「主食」