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ひかくかがくろん

比較科学論

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦――比較科学論」新潮社、1959(昭和34)年4月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,520 字 · 19 页

青空文庫

それは西洋的なものの考え方の基調をなしている思考形式であって、人間の頭脳の力が、文化と伝統とによって、如何に強く支配されているかを、よく物語っている。東洋の全く異なった文化に育成されてきた者の意識は、全く新しい形式の科学の創設に、重要な役割を果さないとは断言できない。例えば、現在の物理学は、自然界から量的に計測し得る性質を抜き出して、その間の関係を、数式で表現する方向に向って進歩してきた。自然界には、それ以外の物理現象がいくらもあるから、そういう問題を取扱う別の物理学があってもよいという考え方である。

その一つとして、先生は「形の物理学」という問題を考えておられた。それについてよく言われていた言葉がある。「形の同じものならば、必ず現象としても、同じ法則が支配しているものだ。形の類似を単に形式上の一致として見逃すのは、形式という言葉の本当の意味を知らない人のすることだ」というのである。これは非常に意味の深い言葉である。先生は、こういう問題について、単に思索されるだけでなく、具体的に、いろいろな現象について、形の研究を進められた。割れ目の研究にしても、電気火花にしても、線香花火にしても、墨流しにしても、みな形の研究という考えが、その基調をなしている。