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みずのおんな
水の女
折口 信夫
「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页
八 とりあげの神女
八 とりあげの神女
国々の神部の乞食流離の生活が、神を諸方へ持ち搬んだ。これをてっとりばやく表したらしいのは、出雲のあはきへ・わなさひこなる社の名である。阿波から来経――移り来て住みつい――たことを言うのだから。前に述べかけた阿波のわなさおほそは、出雲に来経たわなさひこであり、丹波のわなさ翁・媼も、同様みぬまの信仰と、物語とを撒いて廻った神部の総名であったに違いない。養い神を携えあるいたわなさの神部は、みぬま・わなさ関係の物語の語りてでもあった。わなさ物語の老夫婦の名の、わなさ翁・媼ときまるのは、もっともである。論理の単純を欲すれば、比沼・奈具の神も、阿波から持ち越されたおほげつひめであり、とようかのめであり、外宮の神だとも言えよう。だが、わなさ神部の本貫については、まだまだ問題がありそうである。
私は実のところ、比沼のうなゐ神は禊ぎのための神女であり、その仕える神の姿をも、兼ね示すようになったものと信じている。丹波ノ道主ノ貴の家から出る「八処女」の古い姿なのである。この神女は、伊勢に召されるだけではなかった。宮廷へも、聖職奉仕に上っている。この初めを説く物語が、さほひめ皇后の推奨によるものとしていたのである。