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みずのおんな

水の女

折口 信夫

「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页

青空文庫

学校の私の講義のそれに触れた部分から、おし拡げた案が、向山武男君によって提出せられた。それによると、衣通媛の兄媛なる允恭の妃の、水盤の冷さを堪えて、夫王を動して天位に即かしめたという伝えも、水の女としての意義を示しているとするのだ。名案であると思う。穢れも、荒行に似た苦しい禊ぎを経れば、除き去ることができ、また天の羽衣を奉仕する水の女の、水に潜いて、冷さに堪えたことを印象しているのである。水盤をかかえたというのは、斎河水の中に、神なる人とともに、水の中に居て久しきにも堪えたことをいうのらしい。やはりこの皇后の妹で、衣通媛のことらしい田井中比売の名代を河部と言うたことなどもおほゝどのみこの家に出た水の女の兄媛・弟媛だったことを示すのだ。

だが、衣通媛の名代は、紀には藤原部としている。藤原の名が、水神に縁深い地名であり、家の名・団体の名にもなって、かならずしも飛鳥の岡の地に限らなかったことを見せる。ふぢはふちと一つで「淵」と固定して残った古語である。かむはたとべの親は、山背ノ大国ノ不遅(記には、大国之淵)であった。水神を意味するのが古い用語例ではないか。