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みずのおんな

水の女

折口 信夫

「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页

青空文庫

すなわちこれと同時に神としての自在な資格を得ることになる。後には、健康のための呪術となった。が、もっとも古くは、神の資格を得るための禁欲生活の間に、外からも侵されぬよう、自らも犯さぬために生命の元と考えた部分を結んでおいたのである。この物忌みの後、水に入り、変若返って、神となりきるのである。だから、天の羽衣は、神其物の生活の間には、不要なので、これをとり匿されて地上の人となったというのは、物忌み衣の後の考え方から見たのである。さて神としての生活に入ると、常人以上に欲望を満たした。みづのをひもを解いた女は、神秘に触れたのだから、神の嫁となる。おそらく湯棚・湯桁は、この神事のために、設けはじめたのだろう。

御湯殿を中心とした説明も、もはやせばくるしく感じだされた。もっと古い水辺の禊ぎを言わねばならなくなった。湯と言えば、温湯を思うようになったのは、「出づるゆ」からである。神聖なことを示す温い常世の水の、しかも不慮の湧出を讃えて、ゆかはと言い、いづるゆと言うた。「いづ」の古義は、思いがけない現出を言うようである。おなじ変若水信仰は、沖縄諸島にも伝承せられている。