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みずのへんろ
水の遍路
佐藤 垢石
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,481 字 · 7 页
静岡のお城の周りのお堀で、はやと鮒を釣ったこともある。遠州掛川の奥へ入り込み、太田川へ旅したこともあった。焼津の朝日奈川でも、鮎を釣った。
遠州の舞阪と、新居をつなぐ今切の東海道線鉄橋下で、浜名湖の淡水を求めて遡ってくる黒鯛釣りに興じたのも記憶に新ただ。
三州豊橋の傍らを流れる豊川へは、上流長篠の近くまで鮎を追って遡って行った。牟呂の海では鮎と鰡と白鱚と沙魚を釣った。美濃へも、表飛騨へも鮎釣りの旅をした。殊に、裏飛騨の釣り旅は感銘が深かった。
神通川は、飛騨国境の蟹寺で東の高平川と、西の宮川とに分かれるが、宮川の鮎は日本でも最も姿の大きい一つに数えられるであろう。そのうちでも、打保から巣の内へかけての宮川は、峡流岩を噛む間に、勇ましき友釣りの姿を見て、深渓の釣興に一層の趣を添えたのであった。
京都の保津川では、はや釣りと友釣りを楽しんだ。丹後の由良川でも釣りを試みたが、和知鉄橋付近にうぐいの多いのに、驚いたことがあった。土佐の鏡川でも、鮎の群れに眺め入った。
顧みれば、私の釣りの年月は長かった。だが、これからもまた、布衣をまとって、いつまでも渓に海に、竿と糸とに親しむ自分であろうと思う。