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みずがめ

水甕

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,082 字 · 26 页

青空文庫

師匠と別れて後も、独りで錬磨しました。激しい拳法で、相手の生命に関わることがあるので、うかつには使えませんでした。そして帰国してからは、自らそれを警戒する習慣となりました。中本相手の時には用心しながら使って仕合せでした。も少しで危いところでした。

けれども、自ら禁じたその拳法を、既に多少とも使ったのです。そこには、新たな空間が、自由に振舞える空間がありました。

そして彼は、夢みるような気持ちで、前夜のあの屋台店に行ってみました。主人は愛想よく彼を迎えました。けれどそれきりで、何の奇異もありませんでした。あの壮大な魅惑は、片鱗さえも残っていませんでした。葦簀張の屋台店はみすぼらしく狭苦しく、揚物の油の匂いがたちこめていました。仁木は無意味に焼酎を幾杯か飲みました。

もう足許がふらふらしていました。それはマラリヤの発作の時と同じようでした。そして彼は憂欝で、その憂欝に自ら憤っていました。

復興祭はまだ続いていました。或る広場に拵えられてる舞台では、新作の音頭が歌われ踊られていました。大勢の群衆が四方を取り巻いていました。

その群衆の中に仁木は押し入ってゆきました。