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みずごもり

水籠

伊藤 左千夫

「ホトヽギス 第十一卷第二號」1907(明治40)年11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,600 字 · 10 页

青空文庫

今夕の分と明朝の分と二回だけの兵糧を運んでくれたのである。まア話してゆきたまえというても腰をかける場所もない。半四郎君はあまり暗くならぬうちにというて帰ってゆく。ランプをつける。半四郎君の出てゆく水の音が闇に響いてカパンカパンと妙に寂しい音がする。濁り水の動く浪畔にランプの影がキラキラする。全くの夜となった。そして夜は目に映るものの少ないためか、目に見た日暮れの趣にくらべて今は寂しいというより静かな感じが強い。その静かさの強みに、五、六人の人の動きもその話し声もランプの光り鉄瓶の煮え音までが、静かに静かにと上から圧えつけられているようである。かえって少しの光や音や動きやは、その静かさの強みを一層強く思わせる。湿り気を含んだランプの光の下に浮藻的生活のわれわれは食事にかかる。佃煮と煮豆と漬菜という常式である。四畳の座敷に六人がいる格で一膳のお膳に七つ八つの椀茶碗が混雑をきわめて据えられた。他目とは雲泥の差ある愉快なる晩餐が始まる。一切の過去を忘れてただその現在を常と観ずれば、いかなる境地にも楽しみは漂うている。予はビールを抜かせる。

木綿子の挙動には畳四畳の念はない。