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みずとりてい
水鳥亭
「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页
「そんなことを云って、大事な子供をまかせておく我々はどうなるのかね」
「今になんとかしますが、本人にも言いきかせますから、辛抱して下さい」
そのたびに彼は校長室によびつけられ、学務委員や有力者の家を謝罪して廻らねばならなかった。
そして彼の月給は、いつまでたっても、ほとんど初任給に近かった。彼は十の余も若い人たちに追いぬかれ、新学期のたびに、彼の級をひきついだ若い教師に、彼の一年間の教育がなっていないことを罵倒されるのであった。
信子は、大伯母の援助がなければあなたを道づれに自殺したろうと克子に言いきかせるのであった。
信子の母の姉、克子には大伯母に当る人が富裕な人と結婚し、わがままな生涯を送っていたが、ツレアイも死に、アトトリもなかった。このわがままな年寄が、克子を養女の筆頭に選んだのである。
信子はひとり児を養女にだすことに、反対の理由を知らなかった。梅村亮作の家名の如きは、絶えることが世のため人のためである。その家名には恥と貧窮と、悲しみと嘆きがつきまとっているだけだ。咒いによって充たされているだけである。梅村亮作の恥辱まみれの一生は、彼ひとりでしめくくるのが当然であった。