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みずとりてい
水鳥亭
「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页
戦国乱世には、皇居の塀や国宝の仏像で煖をとります。庶民は、仕方のないものです。私の本も、おなじ運命かも知れません」
野口は益々感服して首をふり、あきらめて、ふりむいた。
信子と克子は正月の休みに大伯母のもとへ行ったまま、学校へは診断書を送って、再び東京へ戻らなかった。
三月十日の空襲に、亮作も野口も焼けだされた。しかし、命は助かった。
亮作は大本営発表や、新聞などの景気のいい言いぐさを信用していたし、それまでの空襲の被害が少いので、タカをくくって、防空壕もつくらなかった。もっとも、彼の住むあたりは、土を掘ると水がわくので、手軽に防空壕もつくれなかった。
亮作は家財を一物も助けることが不可能であった。それでも命の助かったのがフシギなくらいであった。
この夜の空襲は、敵機が投弾を開始して諸方に火の手があがってから、ようやく空襲警報がでた始末で、亮作が身支度を終らぬうちに、バクダンの凄い落下音がせまりはじめた。それでも彼はまだ空襲の怖しさを知らなかったので、身支度だけは終ることができたし、現金の小さな包みを腹にまきつけることも出来たのである。
外へでると、火の手がせまっていた。