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みずとりてい

水鳥亭

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页

青空文庫

私は感服しましたよ。しかし、驚きましたな。どうして、あなたが、もっと出世なさらなかったのだろう? 自分の欲する通りに、千円の物を十円に値をつけて、キチンと思い通りの計算をわりだすことがお出来になる。あなたは四角のものを円だと云って、そのワケをキチンと説明のできる方です。白いものを黒だと云って、そのワケをキチンと証明することもお出来になるに相違ありません。自分の欲する通りの計算がおできなのに、どうして一生貧乏なさったのでしょうね。梅村さん。そのワケがお分りですか。なぜ貧乏なさったか? 思いのままにキチンと計算ができながら、ね。そのワケは、こうです。あなたの計算は、あなただけしか通用しません。世間ではその計算が通らないのです。四角は常に四角。白は黒では有りえないのです」

「公式通りには、いきません。なぜなら、戦争ですから。一寸先はヤミ、ということを、あなたは忘れてらッしゃるのです」

「あなたは、又、一寸先はヤミ、というウマイ方式で単純に割りきって、手前勝手な言いくるめ方をあみだしていらッしゃいますよ。しかし、ねえ、それでは人生は身も蓋もありません。そうでしょう。