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ひょうが

氷河

黒島 伝治

1928(昭和3)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,824 字 · 42 页

青空文庫

「お前階級は何だい?」

恩給がほしさに、すべてを軍隊で忍耐している。そんな看護長だった。恩給のことなら百科辞典以上に知りぬいていた。

「一等卒。」

「ま、五項症に相当するとして……増加がついて二百二十円か。」

足のさきから腰まで樋のような副木にからみつけられている、多分その片脚は切断しなければなるまい、それが福地だった。大腿の貫通銃創だ。

「看護長殿、大西、なんぼ貰えます?」

「踵を一寸やられた位で呉れるもんか。」

「貰わにゃ引き合いません。」

負傷者は、それ/″\、自分が何項症に属するか、看護長に訊ねるのであった。何項症であるか、それによって恩給の額がきまるのだ。そんな場合、栗本には、彼等が既に国家に対して債権者となっているように見えてきた。

「何だい! 跛や、手なしや、片輪者にせられて、代りに目くされ金を貰うて何うれしいんだ!」彼は何故となく反感を持った。

しかし、これから、さき、なおどれだけ自分の意志の反してパルチザンを追っかけさせまわらされるか量り知れない自分にはうんざりせずにいられなかった。丈夫で勤務についている者は、いつまでシベリアにいなければならないか、そのきりが分らないのだ。