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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

――今夜、純吉さん泊めてよ」

「夜具は?」

「いいわ、どうだってなるわよ、ね?」

「うん」

房は、東窓を足にし、志野は西を足にし、大垣と床についた。志野は床の中へ塩豌豆の袋を持ち込んだ。

「――どうあなたもたべない」

という声を、房は夢現にきいた。

翌日は、爽やかな好い天気であった。志野が勢よく朝飯の仕度をした。

「私一寸、おみおつけの実買って来るわ」

志野が出て行くと、大垣は、房が髪結うのを側に立って眺めた。

「君の髪、立派だなあ、こんなにあるとは思わなかった。あいつなんて、猫の尻尾みたいだ」

大垣は、ずっと傍によって来た。

「一寸いじらしてくれない」

「何云うのよ。――邪魔だからそっちへどいてなさいよ、男のくせに」

「は、は、男だから、さ。全く髪のいいのいいな。早く君に会ってりゃよかった、あんな棕櫚箒みたいなの!」

房は不快になり、強い声を出した。

「あなたいやな人ね、案外。五分もいないと直ぐお志野さんの悪口なんぞ云う。承知しないから」

変に落着かない朝飯がすむと、二人はまた家さがしに出かけた。房は、やっと朝の快い静けさを味わおうと坐ったばかりのところへ、一旦出た志野が戻って来た。