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「しおくみ」のえについて

「汐くみ」の画に就いて

上村 松園

「大毎美術 第二巻第十一号」1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 957 字 · 2 页

青空文庫

「汐くみ」は私としては相当に苦心を費やし、努力を払うた作品でございます。殊にこの画について心を用いた点は色調でございました。しかしいったいの釣合をとるためには、幾遍も素描をやり直しまして、自分自身でやや満足出来るものに致しましてから、本当に筆を執ったのでございます。

この画は、大作ではありませんけれども、全体に於て私自身の有って居ります考えなり筆なりを、自分でやや満足し得ますところまで現し得たものと信じて居ります。もっとも自分自身で満足するほどの作品というものは、到底出来難いものでございますから、厳密に申しますと、この「汐くみ」だからと申しまして決して十分のものではございませんが、それでも自分では相当の努力を致したものということだけは申されるだろうと思います。

「汐くみ」は舞踊でございまして、なかなか優美なものです。蜑女の所作を美化したものですが、こういう画はどちらかと言いますと損な画で、いわゆる新しい様式のものではございません。新しい様式でないどころか、極めて古い描写のしかただと申されましょう。しかし私は常に考えて居りますことは、この古い様式の画を、私どもぐらいが守って居りませんと、新しい画流行りの現代では、誰もこういうものを描く人がなくなって、やがて美人画は跡を断つに至るだろうと思います。