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えがわらんこ
江川蘭子
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1930(昭和5)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,151 字 · 23 页
と口に出して云わないではいられぬ程であった。
「この子はどこまで美しく、愛らしくなって行くのだろう。恐い様だ」
江川夫妻の話題はその外にはなかった。彼等は愚かにも、十八歳の蘭子が盛装してお嫁入りする姿を妄想していたのである。
小学校では、彼女は校中第一の優等生であった。中にも数学と唱歌と舞踏と体操では、先生は百点以上の点数がないのに困らなければならなかった。
機械体操は、どんな男生よりも上手だったし、プールでのダイヴィングは、学校中の先生も生徒も、それに見とれる為に集って来る程、見事であった。
美貌は無論校中第一であった。先生も生徒も、男という男が彼女を恋していた。そして、蘭子は、たった一人で、何百人の恋人達に、まんべんなく愛嬌をふりまく才能を備えていた。
卒業間際の十四歳の時、二度変なことがあった。一度は先生と四五人の同級生とで国技館へ菊見に行った帰りがけ、着物を着たまま両国橋の上から隅田川へ飛込んだのと、もう一度は、ある百貨店の屋上から飛降りようとして、居合せた刑事に帯を掴まれて果さなかったのとである。
無論、彼女は自殺を考えた訳ではなかった。