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えどがわしとわたし

江戸川氏と私

小酒井 不木

「大衆文藝」1927(昭和2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,375 字 · 3 页

青空文庫

「心理試験」を読んで、私は、何というか、すっかりまいってしまった。頭が下った。もうはや、探偵小説家として立てるも立てぬもないのだ。海外の有名な探偵小説家だってこれくらい書ける人はまずないのだ。そこで、更に大にすすめたのであるが間もなく、一度上京して、いろいろな人に逢って決したい。その序に立ち寄るという手紙が来た。

私は大に待った。十四年の一月、とうとうやって来た。初対面の挨拶に頭の毛のうすいのを気にした言葉があった。私たちは大に語った。江戸川氏は、これから書こうとする小説のプロットを語った。それが、後に「赤い部屋」として発表されたものである。

同氏はこのとき、頻りに私に、創作に筆をそめるようすすめた。私も、創作をして見ようかという心が、少しばかり動いていたときであるから、とうとう小説を書くようになったのである。「女性」四月号に出た「呪われの家」がいわば私の処女作であった。

いよいよ、同氏は小説家として立つことになった。その頃から、日本の探偵小説創作壇がだいぶ賑い出して来た。大阪で探偵趣味の会が出来、各娯楽雑誌にも探偵小説が歓迎されるようになった。