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えどげいじゅつろん

江戸芸術論

永井 荷風

在线阅读永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 页

青空文庫

元禄宝永の演芸は鳥居派初期の丹絵の如く豪放の中稚気を帯びたる精神はその簡易にしてしかも突飛なる形式と相俟つてここに不可思議なる雅趣を示せしものなるべし。享保に入りては河東節その他の音曲劇場に使用せられ、俳優には二世団十郎、元祖宗十郎ら出で、後世の模範となるべき芸道の故実漸く定まりたる時代なり。これを浮世絵に見れば鳥居派の外新に奥村一派の幽婉なる画風と漆絵の華美なる彩色現はれぬ。劇場がしばしば風紀の紊乱と衣裳の華美なるにつきて禁制を蒙りしもこの時代にして、江戸平民の文化は刻々円熟の期に達せんとせり。四世団十郎、初代菊之丞ら出でたる宝暦より明和安永年代は啻に絵画演劇のみにあらず、江戸平民固有の文学美術が尽く関西伝来の感化を脱してその特質を明かにしたる時代なり。江戸演劇も思ふに文調春章の時代においてその内容形式共に完備円熟し尽してやや複雑に流れ天明寛政に至りてはまた浮世絵と同じく漸次繊巧に傾くの弊に陥りしなるべし。原武太夫が宝暦末年の劇壇を罵り、享保の芸風を追慕して止まざりし『隣の疝気』または手柄岡持が壮時の見聞を手記したる『後は昔物語』等を繙きて年々の評判記と合せ読み、これを浮世絵の役者似顔絵に対照せしむれば、また往時の演劇を想像するの一助とならん歟。