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けっとうじょう

決闘場

岡本 かの子

「ペン」1936(昭和11)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,298 字 · 23 页

青空文庫

周りを丈の低い灌木にすっかり取り囲まれて僅かに彼女独りがしっくり樹葉に覆い隠されてしまう場所に来て居た。彼女は芝草の上に膝を斜めに折り屈げて、器械細工のように坐った。両手は無意識の内に膝の上で握り合された。そこで彼女は三度も四度も太い長い溜息を洩した。絶望と嫌悪が彼女の気力を滅入らしてしまって居た。茫漠と彼女は周囲の樹木や草と一体になって時を経過して行った。彼女は自然そのままだった。悠久の命の流れに寂然と身を委せて居た。国亡びた後の山河に、彼女は独り生き残って居るようであった。彼女は自分と現世とをまったく忘れて居た。

突然、彼女は身近くを、そそくさと通り過ぎて行く二人連らしい女の足音に驚かされた。彼女は何か非常に恐ろしかった。自分をこれほど無力に感じた時は今までに無かった。息を殺して警戒した。彼女のとぎすまされた聴覚に別な男性らしい二人連れの近づいて来る音をも聞き分けた。

――おい、相手が見付かったかい。

――……………………………

土曜の晩近くなって急に遊び相手をあわてて求め出した男連れが、当り触りの無いように軽く女連れに誘いをかけたらしかったのだ。