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かわあかり

河明り

岡本 かの子

「中央公論」1939(昭和14)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,244 字 · 98 页

青空文庫

料亭など借りるのは出来過ぎているし、寮は人を介して頼み込むのが大仰だし、その他に頃合いの家を探すのであるが、とかく女の身は不自由である。私は、今度は大川から引き水の堀割りを探してみた。

白木屋横手から、まず永代橋詰まで行くつもりで、その道筋の二つ目の橋を渡る手前にさしかかると、左の河並に横町がある。私有道路らしく道幅を狭めて貨物を横たえているが、陸側は住居附きの蔵構えの問屋店が並び、河岸側は荷揚げ小屋の間にしんかんとした洋館が、まばらに挟っている。初冬に入って間もないあたたかい日で、照るともなく照る底明るい光線のためかも知れない、この一劃だけ都会の麻痺が除かれていて、しかもその冴え方は生々しくはなかった。私はその横道へ入って行った。

河岸側の洋館はたいがい事務所の看板が懸けてあった。その中の一つの琺瑯質の壁に蔦の蔓が張り付いている三階建の、多少住み古した跡はあるが、間に合せ建ではないそのポーチに小さく貸間ありと紙札が貼ってあった。ポーチから奥へ抜けている少し勾配のある通路の突き当りに水も覗いていた。私はよくも見つけ当てたというよりは、何だか当然のような気がした。