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ほうえつクラブ
法悦クラブ
野村 胡堂
「小説の泉」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,176 字 · 28 页
茶谷会長も黙ってしまいました。席に連なる十一人の婦人会員、美しいとも醜いとも見当のつかぬ十一人の女達の間には、何やら激しい動揺の起ったことを、慧眼な会員達は見て取った様子です。
佐々村村一の話はそれで終りました。続いて起ったのは石崎守という髪の毛の長い男、これは画家らしく「女の持つ線」の魅力について、長々と話を始めました。
歌麿や清長の線のエロティシズム、梅原や安井の線の含蓄味、それがマチスやマイヨールの線から、「ロダンの素描の線こそは、まことにエクスタシーを感じさせるもので」などと脱線して行くのです。
三人目は諸沢五郎という中年男、これは異性の美しさは匂いだという議論で、麝香鹿の牡がどうの、人間の体臭が斯うのと大に蘊蓄を傾けて居りましたが、終に「もろもろの香料や化粧品は、文明の生んだ媚薬の一つではあるが、本当の香いの美しさは、清潔な人間の体臭に及ぶものなく、わけてもつくろわぬ処女の体臭こそは、異性を誘う最高のエクスタシーでなければならぬ」と結びました。
それから又二つの話があって、最後に会長の茶谷は、自分の席に立ち上りました。夜は最早十二時を過ぎて、賑やかな一座のうちにも、深夜の淋しさが、何処からともなくはい寄る心境です。