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ほうえつクラブ
法悦クラブ
野村 胡堂
「小説の泉」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,176 字 · 28 页
その証拠には、この「法悦倶楽部」に列席する人は、男性には何んの制限も無いのですが、女性は老いたるも若きも、美しきも醜きも、必ずヴェールか何んかを用いて覆面しなければならず、会の性質上、出席婦人会員の嗜なみの為ということになって居りますが、恐らく阿夜子夫人の異常な嫉妬のためだろうと言われて居りました。そしてこの「法悦倶楽部」などという異常な催しも、阿夜子夫人の異常嗜好のためではないかと言う者さえあったのです。
でも、誰の計画であろうと、「法悦倶楽部」はなかなかに魅力的な会合でした。三十人の会員の約三分の一は婦人ですが、その婦人達が一人残らず顔を隠して、翩翻として舞い、喃々としてお喋舌をするのです。自分の表情を包むということは、内気な婦人達を、どんなに大胆にする方法だったでしょう、その効果を狙って、婦人会員に覆面制を設けたとしたら、主催者の頭の良さは容易ならぬものがあります。
男の会員は、必ずしも若い元気なものばかりでなく、中には分別盛りも過ぎて居る癖に、歓楽を追い足りない、貪婪な肉慾の老獣――四十歳、五十歳、どうかしたら六十歳近い男をさえ交えて、覆面の婦人群と共に、まことにたとえようも無い異様な空気を醸して居ります。