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こうずいたいりくをのむ

洪水大陸を呑む

海野 十三

「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,328 字 · 13 页

青空文庫

ふしぎな器械

「ぼく、生きているのがいやになった」

三四郎が、おじさんのところへ来て、こんなことをいいだした。

「生きているのがいやになったって。これはおどろいたね。子供のくせに、今からそんなことをいうようじゃ心ぼそいね。なぜそう思うんだい」

しらが頭に、度のつよい近眼鏡をかけた学者のおじさんは、本から目をはなして、たずねた。

「だって、ちっともおもしろいことがないんだもの」

「ふん、なるほど」

「おなかはいつもすいているしね、ほしいものは店にならんでいるけれど、高くて買えやしないしね」

「ああ、そうか、そうか」

「その品物だって、とびつくほどほしいものもないし、それから大人の人は、みんな困った困ったおもしろくないおもしろくないといっているしね、ぼくは大人になるのがいやになったの」

「なかなか、いろいろ考えたもんだね。大人になるよろこびがなくなっては、もうおしまいだな。しかしだ、生きているのがいやになったなどというのは人間として卑怯だと思う。また人間というものは、もっと広い世界へ目をやり、遠い大きな仕事のことを考えなくてはならない。いや、そんなお説教をするよりも、今おじさんが三四郎君を一万年ばかり前の世界へあんないしてあげよう。