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こうずいたいりくをのむ
洪水大陸を呑む
海野 十三
「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,328 字 · 13 页
三四郎は、天変地異のおそろしさに、大きな声をあげてその場にうち伏した。もう画面を見つづける勇気はない。
「……もうすんだよ。弟月は、かげも、形もなくなったよ。これからが最も大事なところ。すごい光景が見えるんだ。元気を出して、もう一度画面を見てごらん。なにしろ一万年前の出来事なんだから、そんなにこわがることはない」
おじさんに元気づけられて、三四郎はようやく顔をあげ、映写幕へそっと目をやった。もはや天空に火の魔の乱舞は見られなかった。兄月の冷たい光だけが、空にあった。下半分はアトランチス大陸が、鯨の背のように黒ずんで、海の上に浮かんでいた。
このとき海が、にわかにふくれ上った。高く高くふくれ上がる。あたらしい大陸が出来て、それがうごき出したのかと思ったくらいであったが、事実は黒い海水がふくれあがったのだ。高く高くアトランチス大陸の山脈よりももっと高く! そしてそのふくれた海は、ずんずんと大陸へ近づいて来るのであった。
「あっ、津波だ。すごい津波だ。アトランチス大陸が、津波にのまれてしまう」
三四郎は、思わず叫んだ。
「そうだ。アトランチス大陸が、今や波にのまれてしまうのだ。