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こうずいたいりくをのむ

洪水大陸を呑む

海野 十三

「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,328 字 · 13 页

青空文庫

信仰のあつい二人のアトランチス人の胸中を思いやっての涙であった。

大陸の最後

「こんどは、弟月の方をおっかけよう。さっきよりもずっと大きくなっているはずだ」

おじさんはそういってスイッチを切りかえた。

地平線が黒く横にのびている。その上に、月は高くかがやいていた。

「これは兄月の方だ。弟月はもっと左の方にある」

画面が横にうごいて行く。と、とつぜん画面が明るくなった。そしてちょうちんが画面いっぱいに出てきたと思った。ところがそれはちょうちんではなく、弟月の方だった。兄月にくらべて、もう二三百倍の大きさになっている。

「これが弟月ですか。大きいですね。なぜこんなに大きくなったんです」

「弟月はだんだん下ってきたのだ。地球の引力によってひきよせられたんだ。見ていてごらん。今に弟月は地球にぶつかるから……」

「おじさん。月が地球にぶつかったら、どんなことがおこるんですか」

「見ていたまえ。もうすぐだ」

画面は四五回も切りかえられた。そのたんびに弟月は化物のように大きくなった。まるで地球が空にうつっているようであった。

その怪月の下に、アトランチス人たちが集ってふるえ、のろいの声をあげ、やけになって人殺しをし、またしずかに神に祈りをあげているのが見えた。