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こうずいたいりくをのむ

洪水大陸を呑む

海野 十三

「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,328 字 · 13 页

青空文庫

方々に、えんえんと火がもえあがっていた。神へささげるかがり火か、それとも賊が民家に放った火か。ものすごい光景に、三四郎はたびたび目をふせねばいられなかった。

「ほら、始まった。弟月が地球に触接したよ。あれ、あのように地球にぶつかっている。しかも弟月は自転をつづけているんだ」

おじさんの説明の声がふるえている。

「あっ、おそろしい!」

三四郎は、両手で自分の頭をおさえて、がたがたふるえだした。

見よ、弟月は地球にぶつかっている。そこは大洋らしい。すごい火花と焔と電光が、たがいに交じりあって、目もくらむほどだ。波はさかまき、雲とも湿気とも煙ともつかないもやもやしたものが触接面のところから空高くまいあがる。月は、ときどき空の方へとびあがり、そのあとでまた落ちて来て、地球に衝突する。そのたびに、すごい火の地獄絵がひろがる。月がとびあがったときに見えたが、あの死灰のようであった月が、今はその下半分が炉の中へほうりこんだ石炭のように赤く赤くもえあがっているのだった。

「おお、弟月の最後が近づいた。大爆発をして、こなごなにとび散るよ、あの弟月が……」

おじさんの声が終らないうちに、画面は目もくらむ閃光で、ぴかぴか、くらッくらッと光り、画面に、ものの形を見わけることができなかった。