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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

――では『赤毛のゴリラ』に宣告を与える。一同起立――」

十数名の黒衣の人物は一せいに起立した。「赤毛のゴリラ」の顔は見る見る土のように色褪せていった。ああ生命は風前の灯である。

「宣告、――君は『狐の巣』の監督を怠り、重大なる材料を流出させたる失敗を贖うことを命ずる。忠勇なる『赤毛のゴリラ』よ。地下に瞑……」瞑せよ――と云いかけたその刹那の出来ごとだったが、突然どこからともなく一匹の鼠が現れて、チョロチョロと首領の方へ走りだした。

「オヤッ――」

と叫んだ途端に、「赤毛のゴリラ」の懐からポケット猿がパッと飛出して、鼠の後を追いかけた。首領はハッと身を避けて、この小動物の追駆けごっこを見送った。他の黒装束の連中も思わず、ゾロゾロと前へ踏みだした。そのとき「赤毛のゴリラ」の影のように寄り添った黒装束の一人が素早く何か囁いてソッと手渡したものがあった。――猿は室の隅でとうとう鼠を噛み殺してしまった。一座は元のように整列した。「右足のない梟」は、そこで再び厳かな口調で叫んだ。――

「――『赤毛のゴリラ』よ、地下に瞑せよ」

ズドン。――と銃声一発。首領の手には煙の静かに出るピストルが握られている。