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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

「そう言えばそうだ」

「立花秀子はあれでも職業婦人だから、昼は大抵『愛の友社』に居るだろう」

「行こうよ、勇」

二人が有名な「愛の友社」へ行ったのは、昼を少し過ぎて居ました。昼食をすませた連中は大抵出かけた後ですが「愛の友社」に籍を置く立花秀子は、隅っこの椅子でお茶を啜って居りました。

「立花さん、暫らく」と左り気なく千種十次郎。

「あっ、千種さん、早坂さんも御一緒」

「この間は嫌なことでしたネ」

「え、全く嫌になって仕舞いましたワ、小栗さんが自殺したからって、私まで引合に出さなくてもいいでしょう。私と小栗と何んの関係があるものですか」

「全く、災難でしたね、まア過ぎた事だ、あきらめが肝心ですよ。ところで立花さん、今日は付合って頂けませんかしら?」

「え、招ばれて上げても宜いワ、だけど、何んにも食べられはしませんよ」

「まだ胸が一杯でしょう――」

「あら、千種さん、そんな事を言っちゃイヤ、ね早坂さん」

「僕の腹なら空っぽですよ」

「マア、何んて間抜けな調子でしょう。だけど、私は、早坂さんのその生一本なところが好きよ」

立花秀子は、そう言い乍ら、二人の中へ席を移しました。