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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

それから又十日ばかり経ちました。

足の勇はすっかり立花秀子のアパートに入り浸って、ろくに社へも出ないようになってしまいました。

初めは、千種十次郎に言い含められて、小栗桂三郎の死因を探る為に入り込んだ筈でしたが、何時の間にやら、秀子の取なしと美色に囚えられてしまったのでした。

秀子は、何んとか世間から噂されて居りますが、男性に取っては全く魅力そのものでした。趣味が精練されて、性格はかなり知識的で、作家としても一風を打ち建てて居りましたが、それよりも素晴らしいのは、この女の持って居る肉体の価値です。

「勇さん、貴方は私を探偵する積りだったんでしょう。何んてお馬鹿さんでしょう。私が小栗を殺したとでも思って、ホ、ホ」

高笑いを転がされると、足の勇の持って居た疑いなどは、煙のように吹き飛ばされて了います。

「私は、貴方が好きだったの、本当よ、嘘なもんですか。女優時代にチョイチョイお目にかかったでしょう。貴方の頑固な武骨な新米記者振りが、とてもよかったワ」

「…………」

「白状すると、貴方が大学に居て、ラグビーの選手をやってる頃から好きだったのよ。随分執念深いでしょう、――小栗なんか、冗談でしょう、あんな嫌な男って無かったワ、私大嫌い」