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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

「何うしたの、まア、大変な亢奮よ、貴方は」

「僕には、こんな生活を何時までも続けちゃ居られないわけがあるんだ。秀子さん、これを見て下さい」

「あッ」

秀子が驚いて飛退きました。勇がズボンのかくしから掴み出して、茶卓の上へ置いたのは、黒いラベルを貼った青酸のビンと、銀色の光に西洋鍵が一つ。

「これは何うしたんです秀子さん、――それはかりじゃ無い、僕はこの鍵が小栗の離屋の扉にピタリと合うのを見定めて帰って来ると、此アパートの入口で、貴方があの新聞売とか言った少年と話して居るのを見たんです。秀子さん、斯うなってはもう、何も彼もお仕舞いだ。――サア秀子さん、何んとか言って下さい、弁解があるなら、せめて、僕はその弁解でもいいから聴き度い」

勇は秀子の豊満な腕を扼んで、母親に物を強請る子のように打ち振りました。秀子はそうされ乍らも、小娘のように、シクシクと泣いて居たのです。あの勝気の秀子が――

「勇さん、何も彼もお仕舞いねえ、私はもう隠しも何うもしない、そのビンと鍵は一体何処から手に入れなすったの?」

「この化粧卓の抽出から」

「ああ、矢張りあの女だ」

「あの女と言うと?」