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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

「勇さん、小栗を殺したのは私よ、確かに私に相違ないワ。だけど、これにはわけがあるワ、――あの小栗と言う奴は、そりゃ悪人よ、私の昔の過失を知って居て、それを世の中に発表しそうにしておどかして居たんだワ。世間では、私とあの男と関係があったように言うけれどそれは真赤な嘘よ」

「えッ」

「みんな小栗の細工だワ、そして私の名誉をメチャメチャにして自分の思う通りにしようとしたんだワ」

「だけど、たった一度私はあの男に接吻を許したわ、あの晩」

「えッ」

「そうするより外に仕方が無かったんだワ、御覧なさいなこんな、具合に――」

秀子はその熱を帯びた美しい唇を持って来て、勇の唇を追いました。物悲しい眼を一パイに見開いて。

プーンと女の口から巴丹杏の匂い、――

「小栗は夢中になって、カプセルに入った青酸を、私の口から吸い取ってしまっただけの事よ、だけど、勇さんには、このカプセルはやらないわ」

「あッ、秀子さん、それを呑んじゃ、それを」

「左様なら――」

あッと言う間もありませんでした。

秀子は其儘長椅子に凭れて倒れて、ヒクヒクと恐ろしい痙攣が全身を走ります。

立花秀子は、小栗に脅迫されて、危うく貞操を奪われそうになった時、フト手に入れた青酸を二重のカプセルに入れてその上を厳重に密封したのを、接吻にことよせて口移しにして了ったのでした。