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あさまふんかこう
浅間噴火口
豊島 与志雄
「文芸春秋」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页
その夢が、外套だったんです。」
こんどは正枝の方で分らなくなった。二三度おかしな問答を繰返した後、諦めてしまった。
「なんだかちっとも分りません。熱があるんでしょう。早く行ってお寝みなさい。」
李がしょげ返って出てゆき、一人になると、正枝はまた腹がたってきた。女中にあたりちらした。
だが、話はそれきりになり、外套は結局、正枝の手で泥を払われアイロンまでかけられて、李に渡された。
その時、李はひどく神妙な様子で、今後は酒を節すると誓い、そうした気持の支柱になる事柄を考えついたから、室代の二十二円を、二円だけまけて下さい、と云いだした。理由を尋ねても、返事をきくまでは打明けられないと強情を張った。しまいに正枝が、それでは一円まけてあげようと折れると、李はほんとに嬉しそうな顔をした。そして云うには、これから、まけて貰った一円とそれに自分が一円だして、毎月二円ずつ正枝に預けることにする、その金は春日荘を去る時に貰えばよく、それまで正枝に貯金をするのだ……。そう聞くと、正枝も喜び、だが郵便局にでも預けた方がよいと勧めたが、李は承知せず、これは自分の心の修養の支柱だから、是非とも正枝が預ってくれなければいけないと主張した。