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あさまふんかこう

浅間噴火口

豊島 与志雄

「文芸春秋」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页

青空文庫

」と江原は云って、煙草を吸いながら考えこんだ。

江原はたゞそれだけを確かめに来たものゝようで、此度は逆に、正枝の方から李のことをいろいろ尋ねはじめた。そして話はあちこちに飛んだ。

江原のところでは「パルプ」という同人雑誌を引受けていた。同人はみな三十前の青年で、その中の一人が江原の友人の弟なので、全く好意的な仕事だった。「パルプ」というのは紙になる前の原料で、即ち印刷して売り出される文学や評論の一つ手前の原料だという意味らしかった。だが真意は、それ故一層多くの若さと力と真実とが籠ってるものということになるらしかった。同人達は自ら進んで活字拾いにまでやって来た。印刷所は彼等にとってはまた仕事場でもあった。李永泰もその中の一人で、たゞ同人でないのだけが違っており、そして無償で他の端物の仕事もさせて貰える謂わば一種の徒弟だった。李と同様の地位にあって、仕事のこんだ時にはいつでも動員に応ずる代り、日給を貰うことになってる者に、別所次生という青年がいた。李は別所からいろいろの仕事を教わり、別所は李からいろいろの知識を吸収していた。

別所は春日荘に李の室を訪れることもあったし、正枝もその顔を見識っていた。