轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あさまさんろくより
浅間山麓より
寺田 寅彦
「週刊朝日」1933(昭和8)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,574 字 · 8 页
しかし噴火口から流れ出した熔岩は、重力という「鬼」の力で押されて山腹を下り、その余力のほんのわずかな剰余で冷却固結した岩塊を揉み砕き、つかみ潰して訳もなくこんなに積み上げたのである。
岩塊の頂上に紅白の布片で作った吹き流しが立っている。その下にどこかの天ぷら屋の宣伝札らしいものがある。火山に天ぷらは縁があると思えば可笑しい。
岩塊の頂で偶然友人N君の一行に逢った。その案内で程近い洞穴の底に雪のある冷泉を紹介された。小さな洞穴の口では真冬の空気と真夏の空気が戦って霧を醸していた。N君からはまた浅間葡萄という高山植物にも紹介された。われわれの「葡萄」に比べると、やはり、きりっと引きしまった美しい姿をしている。強い紫外線と烈しい低温とに鍛練された高山植物にはどれを見ても小気味のよい緊張の姿がある。これに比べると低地の草木にはどこかだらしのない倦怠の顔付が見えるようである。
帰りに、峰の茶屋で車を下りて眼の上の火山を見上げた。代赭色を帯びた円い山の背を、白いただ一筋の道が頂上へ向って延びている。その末はいつとなく模糊たる雲煙の中に没しているのが誘惑的である。