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うきよえのかんしょう
浮世絵の鑑賞
永井 荷風
「中央公論 第二十九年第一號」1914(大正3)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,949 字 · 14 页
日本都市の外観と社会の風俗人情は遠からずして全く変ずべし。痛ましくも米国化すべし。浅間しくも独逸化すべし。然れども日本の気候と天象と草木とは黒潮の流れにひたされたる火山質の島嶼の存するかぎり、永遠に初夏晩秋の夕陽は猩々緋の如く赤かるべし。永遠に中秋月夜の山水は藍の如く青かるべし。椿と紅梅の花に降る春の雪はまた永遠に友禅模様の染色の如く絢爛たるべし。婦女の頭髪は焼鏝をもて殊更に縮さざる限り、永遠に水櫛の鬢の美しさを誇るに適すべし。然らば浮世絵は永遠に日本なる太平洋上の島嶼に生るるものの感情に対して必ず親密なる私語を伝ふる処あるべきなり。浮世絵の生命は実に日本の風土と共に永劫なるべし。しかしてその傑出せる制作品は今や挙げて尽く海外に輸出せられたり。悲しからずや。
大正二年正月稿