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うみのおどり

海の踊り

小川 未明

「少女画報」1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,419 字 · 7 页

青空文庫

」と、英吉は、ひざまずいて祈っていました。

「おまえのそばにある、紅い、小さな花はなんの花か?」

女神の声は、目に見えない、不思議な泉のように、若者の魂に、ささやくと、彼は、涙ぐましい感激にむせびました。

「神さま、私は、自然に対して、いつも謙遜な心を抱いています。海、鳥、花、木……すべて生命あるものに対して、真心をもっています。この紅い、小さな花は、雪割草です。おばあさんが、この鉢に、水をやるのを忘れるといけないと思って、私は、船の中まで持ってきました。春を待つ、この花の短い命を救ってください。」

女神は、いそいで去りました。そして、このことを他の神々に、告げました。許されたのか、風が変わって、英吉の船をいままでとは反対の方角に吹きつけると、逆巻く波は、つぎからつぎへと、船をほんろうして、ちょうど木の葉をもてあそぶようでありましたが、船は、いつしか港の方へ追いやられたのでした。そして、日暮れ方から、幾分か海の上が、穏やかになったので、英吉は、喜んで、陸の方へ、あらんかぎり、腕に力を入れてこぎだしました。

村では、人々が、英吉の船が、まだもどらないので心配していました。