轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かいりゅう
海流
宮本 百合子
「文芸春秋」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,977 字 · 72 页
十時から三田の訳読があることになっている宏子たちの組がB教室に入った時、その危惧と憤慨との混りあった女学生たちの緊張は、頂点に達した。
三田を尊敬している学生の多いこの組は、きっちり時間に席についた。そして、静かに、大部分のものが刻々に待ちながら、或る者は引きのこしていた二つ三つの単語を字引で調べたり、万年筆のインクの工合を直したり、宏子もそれ程三田に傾倒しているというのではなかったけれども、やはりその朝は特別な待ち心地でマンスフィールドの短篇集の今読みかけているところをぼんやりめくっていた。
しーんとしている中でやがて、誰かが、
「どうしたんでしょう、もう十分すぎよ」
と云った。そう大きい声で云ったのでもなかったろうが、その声は朝の明るい不安な予期に充ち満ちている教室の空気を徹して、はっきりと響いた。
「――本当にもういらっしゃらないのかしらん」
訴えるような声で云いながら徳山須賀子が自分の席から三田がしめていると同じ木彫りの丸いバックルをつけている細い胴をねじって、ぐるりを見まわした。
後方の席にいるはる子が、その時、
「飯田さん、学務へ行ってきいて来なさいよ」