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かいりゅう
海流
宮本 百合子
「文芸春秋」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,977 字 · 72 页
門限ぎりぎりに、渋谷にある三田の家へ行った連中が戻って来た。宏子は緊張した期待をもって徳山の部屋へ行って見た。寝台の上に四五人、デスクの前の椅子のところに徳山とはる子、杉などがいて、どの顔の上にも昼間とは違う憤慨と当惑の色が漂っている。
「どうだった、会えた?」
と宏子は当らずさわらずに訊いた。
「会えたわ。三田先生だってやめたくなんか、ちっともないのよ」
徳山が意気沮喪したように片手をあげて自分のおでこを擦った。
「でも――」
「そりゃ三田先生としては、自分の立場として皆おとなしく勉強してくれとしか云えないにきまっていますよ」
はる子がつよい口調で云った。
「宗教問題が絡んでいるのよ。三田先生、あっちにいた時教会を脱退したんだって。それが問題になって、ミス・ソーヤーなんかが理事会でごねたらしい。勿論民公がたきつけているのさ」
「ここは神学校じゃないわ」
激しく一人が云った。
「三田先生を惜しがるのがいけないんなら、もっとどしどしほかに新鮮な先生を入れてくれればいいじゃないの。お祈りしちゃ啀み合っているなんて、それこそ矛盾してる!」
皆苦笑いした。カキはいつも矛盾をムジンしているというのである。