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あざらしとう

海豹島

久生 十蘭

「大陸」1939(昭和14)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,311 字 · 48 页

青空文庫

眠りにおちるとともに、とりとめのない疑念は消え、もうすっかり忘れていたが、花簪を見るなり、また思いだした。土間の古釘や木片にまじって小さな紙玉がひとつ落ちている。皺をのばして見ると、柱暦からひきちぎった紙で、櫛から拭きとった女の長い髪が十本ほど丸めこまれてあった。柱暦は昨年十二月廿七日の日附であった。

狭山と五人の焼死者のほかに、誰かもうひとり島にいたのではなかろうかという想像は、これで動かすべからざる事実になった。

残留を命じた六人のほかに、もう一人の人間が島にいた。七人目の人間はまだうら若い娘で、少くとも十二月二十七日まで、この島で生活していたのである。

十二月二十七日――

本島とこの島との交通は、昨年、十一月十四日に敷香を出帆した定期船、大成丸を最後に杜絶し、今年、三月八日、私が便乗してきた第二小樽丸で開始された。その間、いかなる汽船も島へ寄航していない。危険な流氷と濃霧のため、この近海へ近づくことが出来ないのである。

絶対に出て行く方法がないのだから、花簪の主はまだこの島に居なければならぬ理窟になるが、われわれの小屋は直接第三紀の岩盤の上に建てられたもので床下などなく、天井は※(「木+垂」