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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
「大陸」1939(昭和14)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,311 字 · 48 页
た。この秘密は、その後、二十年の間、各自の厳重な緘黙によって保たれていたが、スウェルドルップの臨終の懺悔によって、はじめて明らかにされた。荒凉たる絶海の孤島に住む六人のあらくれ男の中に、ただ一人の若い娘……そのことは、当然、起るべくして起った。どのような光景だったか、想像するに難くない。比喩的な表現を用いれば、六人の男どもは、膃肭獣の島の気質にならって、劇しい争奪の末、無残にも雌をひき裂いてしまった。狭山がそれを口外せぬのは、共同の秘密にたいする仁義をまもっているので、そういうのが、この社会の良心なのである。
では死体はどんな風に始末したのか。すぐ考えつくのは、ボイラーの火室で焼却する方法だが、島の乾燥室にあるのは、横置焔管式のコーニッシュ罐で、簡単な装置で、充分に熱瓦斯を利用するため、水管が焔室の中に下垂し、粉炭を使用するので、焚口は小さく、二重に火格子を持つ特殊な構造になっているので、死体を寸断したとしても、火室で人間を焼却することは不可能である。
また、この島の氷の下は第三紀の岩盤になっているので、氷を穿って始末したかと考えるのは無意義だし、砂浜に埋めれば、解氷期の潮力の作用で、春先になって、ぽっかりと海面に浮かびだす危険がある。