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りゃんちん

涼亭

田中 貢太郎

――序に代へて――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,140 字 · 15 页

青空文庫

また足許には焼火したらしい枯枝の燃えさしがあって、糸のような煙が立っている。蒲留仙はこうして旅人を待っていて、茶を勧め、淡巴菰を喫まして、牛鬼蛇神の珍らしい話をさせ、それを「聊斎志異」の材料にしているところである。

そこへ村の男が一人上手から来て涼亭の中へ入って来る。竹で編んだ笠を着けて、手の付いた笊に瓜のような物を入れ、それを左の肱にかけているが、蒲留仙を見つけると皮肉な眼付をする。

村の男 先生と張公の媽媽じゃ、辛抱がええわえ。今年でもう六年じゃ、毎日毎日、あの坂の上で、張公の帰りを待ってるが、なんぼ待ったところで、水に溺れて死んだ者が戻るもんか。気違いじゃからしかたがないが、考えてみりゃ、可哀いそうなもんじゃ。……時に先生、近頃は面白い話が聞けますか。

蒲留仙はやっと眼を開けたが、村の男の顔は見ずにめんどくさそうにいう。

蒲留仙 ……うむ、……うむ、話もね……。

そして淡巴菰の火が消えているのに気が注いたようにして、足許の燃えさしに吸いつけて喫む。村の男はそのさまをじろじろと見る。

村の男 ほんとに学者という者は、辛抱がええな。あの赤い星が、雷のような音をして東へ飛んだ年にも、ここにおったというじゃありませんか。