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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

「へい。ですが、こないだ腫んでた皮を赤剥けにして、親方に譴られましたもの……」と渋くったが、見ると、お上さんは目を真赤に泣き腫らしているので、小僧は何と思ったか、ひどく済まないような顔をしてコソコソと二階へ上って行く。

「医者のあの口振りじゃ、九分九厘むつかしそうなんだが……全くそんなんだろうか」と情なさそうに独言ちて、お光は目を拭った。

ところへ、「郵便!」と言う声が店に聞えて立ったが、自分の泣き顔に気がついて出るのはためらった。

「吉田さん、郵便!」

「はい」

「ここへ置きますよ」

配達夫の立ち去った後で、お光はようやく店に出て、框際の端書を拾って茶の間へ帰ったが、見ると自分の名宛で、差出人はかのお仙ちゃんなるその娘の母親。文言は例のお話の縁談について、明日ちょっとお伺いしたいが、お差支えはないかとの問合せで、配達が遅れたものと見え、日附は昨日の出である。

端書を膝の上に置いて、お光はまたそれにいつまでも見入った。

「全くもうむずかしいんだとしたら……」としばらくしてから口に出して言ったが、妙に目を光らせてあたりを見廻し、膝の上の端書を手早く四つに折って帯の間へ蔵うと、火鉢に凭れて火をせせり出す。