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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

とニヤリ歯を見せて笑う。

お光はサッと顔を赤くしたが、「つまらないことをお言いでないよ! 昔馴染みだとか、他人のように思えないだとか、何か私と厭らしいことでもあったようで、人聞きが悪いじゃないか」

「へへ、誰も人は聞いてやしませんから大丈夫でさ」

「あれ、まだこの人はあんなことを言って! 金さんと私とは、娘の時からの知合いというだけで――それは親同士が近しく暮らしてたものだから、お互いに行ったり来たり、随分一緒にもなって同胞のようにしてたけど……してたというだけで、ただそれだけのものじゃないか、お前さんもよっぽど廻り気の人だね」

「へへ、そうですかね」と為さんは例のニヤリとして、「私もどうか金さんのような同胞に、一度でいいから扱われて見てえもんですね」

「じゃ、金さんの弟分にでもなるさ」と言い捨てて、お光はつと火鉢を離れて二階へ行こうとすると、この時ちょうど店先へガラガラと俥が留った。

俥を下りたのは六十近くの品のいい媼さんで、車夫に銭を払って店へ入ると、為さんに、「あの、私はお仙のお母でございますが、こちらのお上さんに少しお目にかかりたくてまいりましたので……」